いちばん新しい Unity 6 を入れてVRChatのワールドを作り始めると、最後のアップロードで止まります。VRChat のワールド制作は、2026年10月時点でも Unity 2022.3.22f1 で行う決まりだからです。
この記事では、VRChatのワールドの作り方を初心者が覚えていく順番を、Unity をまだ触ったことがない人向けにまとめました。始める前に確かめること、最初のワールドを公開するまでの5段階、普通のUnityとの違い、独学でつまずきやすい所の順に書いています。手順は VRChat 公式のクリエイター向けドキュメント(creators.vrchat.com)で確認した内容です。
VRChatのワールドの作り方は「Unity+VRChat SDK」の2つを覚える
VRChat のワールドは、Unity で作ったシーンを VRChat SDK(ワールド用の開発キット)でアップロードしたものです。専用の編集ソフトがあるわけではなく、地形や建物を置く作業はふつうの Unity とほぼ同じ。そこに「VRChat の決まり」が重なっている、と考えると分かりやすいと思います。
なので、覚えることは大きく2つに分かれます。
1つめは Unity の基本操作。シーンにオブジェクトを置く、マテリアルを付ける、ライトを当てる、といった部分ですね。2つめは VRChat 側の決まりで、スポーン地点の置き方、使えるコンポーネントの制限、ギミックを作るための Udon(ユードン)などがこちらに入ります。
初心者が混乱しやすいのは、この2つを同時に調べてしまうこと。「Unity の解説記事に書いてあるスクリプトが VRChat では動かない」という場面に早い段階で出会うので、どちらの話なのかを意識して読むだけでも迷いが減ります。
始める前に確かめる3つのこと(Unityのバージョン・ランク・Quest対応)
Unity は 2022.3.22f1 を使う(Unity 6 はまだ使わない)
VRChat 公式の「Current Unity Version」のページでは、ワールドやアバターを作る Unity のバージョンは 2022.3.22f1 と決められています。ここはかなり厳密で、それより新しいバージョンで作ったものは VRChat で読み込めなくなることがある、と書かれています。
ややこしいのが、2026年10月2日のリリース 2026.3.3 で、VRChat の本体(遊ぶ側のアプリ)が Unity 6 に移ったことです。ニュースだけを見ると「もう Unity 6 で作っていい」と思いがちなんですが、同じパッチノートで、作り手は SDK のプロジェクトを Unity 6 に上げないように、と注意されています。作る側が Unity 6 に移れる時期は、まだ発表されていません。
アップロードには「New User」以上のランクが要る
VRChat には、プレイ時間や交流の量で上がる「トラストランク」があります。公式の「Creating Your First World」によると、ワールドをアップロードするにはランクが「New User」以上でなければいけません。作ったばかりのアカウント(Visitor)でもビルドしてテストすることはできますが、入れるのは自分だけです。
さらに、ワールドを誰でも入れる公開状態にするには、Community Labs という審査の場に出す必要があります。VRChat の公式Wikiのランク表では、Community Labs へ出せるのは1つ上の「User」ランクからとされています。
ランクは放置していても上がりません。ワールドを作る勉強と並行して、ふつうに VRChat で遊んでおくのが近道です。Steam や Meta のアカウントで遊んでいる人は、VRChat のアカウントとのひも付けも先に済ませておきましょう。
PC だけにするか、Quest・スマホでも遊べるようにするか
Quest やスマホ(Android・iOS)でも入れるワールドにしたい場合は、Unity のインストール時に Android Build Support(iOS も対象にするなら iOS Build Support)を足しておきます。公式の Android 向けの制限のページでは、Android と Quest ではポストプロセス(画面全体の色味や光のにじみの効果)が無効になると書かれています。
最初の1つは PC だけで十分です。見た目の作り込みが Quest では効かないことを知っておけば、あとから対応するときに慌てずに済みますね。
初心者が学ぶ順番|最初のワールドを公開するまでの5段階
1. Unity の基本操作に慣れる(目安は数日〜1週間)
いきなり VRChat のワールドを作り始めるより、先に Unity の画面に慣れたほうが結果的に早く進みます。シーンビューでの視点の動かし方、ヒエラルキーとインスペクターの関係、オブジェクトの移動・回転・拡大。このあたりで手が止まらなくなれば十分です。
Unity 公式の無料教材 Unity Learn は、日本語に切り替えられるコースもあって入り口に向いています。進め方は別の記事にまとめました。
ここで C# の勉強に深入りする必要はありません。後で説明するように、VRChat のワールドではふつうの C# スクリプトがそのままでは動かないからです。
2. VRChat Creator Companion でプロジェクトを作る
VRChat の公式ドキュメントが勧めているのは VRChat Creator Companion(VCC)というツールです。VCC が Unity と VRChat SDK をまとめて入れてくれるので、バージョン違いで悩む場面がぐっと減ります。
VCC で「World」のプロジェクトを新しく作ると、ワールド用の SDK が入った状態の Unity プロジェクトができあがります。ギミック用のプログラミング言語 UdonSharp と、Unity の中で VRChat の動きを試せる ClientSim は、SDK 3.4.0 からワールド用の SDK に含まれるようになりました。昔の解説記事にある「UdonSharp を別に入れる」手順は、今は要りません。
3. VRCWorld を置いて「Build & Test」してみる
プロジェクトができたら、まず床だけのワールドを作ってテストまで通します。公式の「Creating Your First World」の流れはこうです。
メニューの VRChat SDK > Show Control Panel を開き、Authentication でログインします。Builder タブで「Add a VRCSceneDescriptor」を押すと、ヒエラルキーに VRCWorld というオブジェクトが追加されます。プレイヤーはこの VRCWorld の位置に出てくるので、床の上に動かしておきましょう。
あとは Builder の画面でワールド名や定員を入れ、Build Type で「Build & Test Your World」を選んでビルドします。エラーや注意が出たときは、同じ画面の検証欄に自動修正のボタンが出ることがあるので、まずそれを押してみてください。
床と VRCWorld だけの何もないワールドでも、一度テストまで通しておくのがおすすめです。作り込んだあとに初めてビルドすると、どこが原因で止まったのかが分からなくなります。
4. 見た目を作る(建物・小物・ライト)
テストが通ったら、ワールドの見た目を作っていきます。3Dモデルを一から作れなくても大丈夫で、BOOTH や Unity Asset Store には、ワールドに使える建物や家具の素材がたくさんあります。モデルやマテリアル、シェーダー中心の素材なら、VRChat でもそのまま見た目として使えます。
Asset Store でよく買われている素材は、こちらの40選でまとめています。
この段階で覚えておきたいのが、ライトのベイク(光と影を前もって焼き込んでおく処理)です。Quest 向けの公式シェーダー「Lightmapped」はリアルタイムの光に対応しておらず、焼き込んだ光で見せる前提になっています。PC だけのワールドでも、ベイクしておくと重さを抑えられます。
5. Udon・UdonSharp でギミックを作る
ドアを開ける、照明を切り替える、ボタンで音を鳴らす、といった動きは Udon で作ります。Udon にはノードをつないで作る Udon Graph と、C# とほぼ同じ書き方の UdonSharp があります。プログラミングが初めてならノードから、少しでも C# を書いたことがあるなら UdonSharp から入ると覚えやすいはずです。
UdonSharp のスクリプトは、プロジェクトウィンドウで右クリックして Create > U# script で作ります。普通の C# ファイルと一緒に、Udon 用のプログラムのファイルも同じフォルダにできます。
普通のUnityとの違い|キャラクターコントローラーもC#スクリプトも使わない
ふつうの Unity でゲームを作るときは、まずプレイヤーを動かすキャラクターコントローラーを用意します。このブログでもキャラクターコントローラーのアセットを比べてきましたが、VRChat のワールドではこれが要りません。
歩く・走る・跳ぶといった操作は VRChat 側が持っていて、ワールドの作り手が決められるのは速さなどの数値だけ。公式ドキュメントの「Player Forces」に、変えられる値と初期値が載っています。
| 項目 | 変える命令 | 初期値 |
|---|---|---|
| 歩く速さ | SetWalkSpeed | 2 |
| 走る速さ | SetRunSpeed | 4 |
| 横歩きの速さ | SetStrafeSpeed | 2 |
| ジャンプの強さ | SetJumpImpulse | 0(VRCWorld プレハブでは 3) |
| 重力の強さ | SetGravityStrength | 1 |
ジャンプの初期値が 0 なのは見落としやすい所です。VRCWorld を使わずに作ったワールドで「跳べない」となったら、ここを疑ってみてください。
UdonSharp で書くと、たとえば次のようになります。公式ドキュメントにあるメソッド名で書いた例で、自分のプレイヤー(ローカルプレイヤー)にだけ使える、という決まりがあります。
using UdonSharp;
using UnityEngine;
using VRC.SDKBase;
// ワールドに入った人の移動の速さを変える
public class PlayerSpeedSetting : UdonSharpBehaviour
{
[SerializeField] float walkSpeed = 3f; // 歩く速さ(初期値は 2)
[SerializeField] float runSpeed = 5f; // 走る速さ(初期値は 4)
[SerializeField] float jumpImpulse = 3f; // ジャンプの強さ(0 だと跳べない)
void Start()
{
// 自分のプレイヤーだけを取り出す(ほかの人の値は変えられない)
VRCPlayerApi player = Networking.LocalPlayer;
if (player == null) return; // エディタでプレイヤーがいない時は何もしない
player.SetWalkSpeed(walkSpeed);
player.SetRunSpeed(runSpeed);
player.SetJumpImpulse(jumpImpulse);
}
}
もう1つの大きな違いが、使えるコンポーネントの制限です。VRChat の公式ドキュメントには、ワールドで使えるコンポーネントの一覧(許可リスト)があり、「この一覧にないコンポーネントは動かない」と書かれています。自分で書いた普通の C#(MonoBehaviour)のスクリプトもこの一覧には入っていません。
つまり、Asset Store で買ったアセットのうち、C# のスクリプトで動く部分(インベントリやセーブの仕組みなど)は VRChat では動きません。素材を選ぶときは「見た目のための素材か、スクリプトで動く仕組みか」を見分けるのが大事なポイントになります。
ワールドの素材を無料・有料で揃えるコツ
VRChat 向けの素材は BOOTH に多く、ワールド制作をまとめて手伝ってくれる支援ツールも出ています。たとえば2026年4月に発売された「ワールドつく〜る」は、カタログから家具を置いたりライトのベイクを調整したりできる制作支援ツールで、動作環境は Unity 2022.3.22f1 と VRChat SDK – Worlds 3.10.2 と案内されています。
一方、建物や自然、小物の3Dモデルは Unity Asset Store のほうが種類も量も多く、ジャンルごとに探しやすくなっています。ただし、Unity 2022 系でインポートできるか(対応バージョンの欄)、レンダーパイプラインが Built-in(標準)か、の2点はかならず確認しましょう。VRChat は Built-in のレンダーパイプラインで動いているので、URP や HDRP 専用の素材だとマテリアルがピンク色になります。
インポートでプロジェクトを壊さないための手順は、こちらの記事にまとめています。アセット導入でプロジェクトを壊さないための安全なインポート手順
有料の素材は、Asset Store のセールの時期に買うと半額前後まで下がることがあります。毎月のセールの情報はこちらで更新しています。
独学でつまずきやすい所と、学び方の選び方
VRChat のワールド制作は独学で始める人がほとんどだと思います。そのうえで、最初につまずきやすいのは次のような所です。
まず、公式ドキュメントが英語であること。とはいえ、メニュー名やボタン名は英語のまま操作するので、ブラウザの翻訳を使いつつ、ボタン名だけは原文で覚えておくと迷いません。
次に、古い解説記事の多さです。VRChat は SDK2 から SDK3 への移行、UdonSharp の SDK への統合、と仕組みが何度も変わってきました。検索で見つけた記事の日付が古いときは、手順の画面が今と違っていないか確かめてください。
3つめは、スクリプトのエラーで先に進めなくなること。UdonSharp も中身は C# なので、セミコロンの抜けやスペルミスでエラーが出ると、ビルドもテストもできません。よく出るエラーの読み方は、こちらの記事が参考になると思います。
独学で行き詰まったときに一番効くのは、Unity と C# の基礎を一度きちんと固めることです。VRChat 専用のカリキュラムを持つスクールは多くありませんが、Unity の基礎を質問しながら学べるオンラインスクールなら、ワールド制作にもそのまま生きてきます。Unity を扱っているスクールは、こちらで比べています。
目的別に Unity の何から学ぶかを整理した記事もあります。VR で手を動かすゲームを作りたい人向けの順番は、目的別・Unity学習ロードマップを見てください。
まとめ|VRChatのワールド作りは「床だけのワールド」から
VRChat のワールドの作り方を初心者が覚える順番は、Unity の基本操作 → VCC でプロジェクト作成 → 床だけのワールドでテスト → 見た目づくり → Udon のギミック、の5段階です。
始める前の確認は3つ。Unity は 2022.3.22f1(本体が Unity 6 になっても、作る側はまだ移らない)、アップロードには New User 以上のランク、Quest にも対応するなら Android Build Support を入れておくこと。この3つを押さえておけば、最初のワールドを公開するところまではたどり着けるはずです。
普通の Unity と違って、キャラクターコントローラーも C# のスクリプトも使わない、という点だけは最初に頭に入れておいてください。素材選びで「動かないアセットを買ってしまった」という失敗を防げます。ワールドに置く建物や小物をまとめて揃えたい人は、今月の Unity Asset Store のセール情報もあわせてチェックしてみてください。







